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おくればせながら狂犬病予防注射


 過日、狂犬病予防注射を接種するため動物病院へ。ひいにとって、鑑札をもっている日本の犬にとっての一年のはじまりと言ったところか。そして、ひいの一年に一度の健康診断の日でもある。
 毎度のことではあるがひいは家を出る前から常ならぬものを察知して、不審そうに私を見つめた。そこをなんとか外に連れ出し動物病院まで歩いて行ったのだが、病院そのものは恐くはないらしく自分から自動ドアの中へ入った。ところが待合室ではぶるぶる震えが止まらない。ほかの犬たちは落ち着いていて、犬同士「コンニチワ」という感じで尻のにおいをかいだり、飼い主になでられてうっとりしてしているというのに。
 しばらくして、ひいの順番が回ってきた。
 先生には、毎年恒例の血液検査と、フロントライン、カルドメックの処方もお願いする。そういえば去年は血液検査の解析にミスがあり、BUN値が異常に高く現れ、ひいの命は風前の灯かもしれないと宣告されたっけ。再検査の結果、まったくの健康体であることがわかりほっとしたけれど、あのときはオトウもオカアも泣いたのである。
 まずは体重測定。体重11.2kgなり。
 前回、12月のワクチン接種のときの測定から300gの減量成功。先生からも「やせましたね」の言葉をもらう。太り過ぎには見えないけれど、それでもあと2kgすくなくてもよいらしい。あの小さな体で2kgは、私の肥えた体で何kgに相当するのだろうか。ひいはまたしばらく餌の量を減らすことになり、私はコンニャク入りご飯を食べ続けるのである。犬の世界も、人の世界も厳しい。
 採血、狂犬病予防注射も無事終了。
 注射そのものはさほど痛くなさそうだし、先生と看護師のお姉さんは優しいし、ひいも抵抗したり逆らったりしない。それなのに、診察室を出て待合室に戻ると私の膝に救いを求めるように必死になってよじ登ってきた。家のソファーと違い待合室の椅子は座面の奥行きがないので、ひいを膝に乗せたままでいるのはとてもつらい。しかもずり落ちないようにひいが太ももにしがみつくので痛いし、こちらは無理な姿勢を強いられる。あまりに重たいから膝から降ろすと、今度は股の間に逃げ込んだ。
 ようやくフロントラインとカルドメックをもらい、会計。
 受付に向かおうとするが、ひいは床に這いつくばって動かない。これを見ていた他の飼い主からも、院長の奥さんからも、「こわがりさん」と笑われる。
 こうして、どたばたのうちに春の恒例行事は終わった。
 家に戻ったひいは、いつものベッドの上に行かず、机に向かっている私の足下にずっと寝そべっていた。

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