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警戒!警戒!


 外へ出たいとひいがせがむ。
 小便をしたいのか、それともおもての世界を見たいのかわからないが玄関のドアを開けてやった。
 外へ出ると、まず空を仰いでにおいをかぎ、ゆらりゆらりと舞っているアゲハチョウを目で追っていたかと思うと、顔をきっと道路へ向けた。何かを警戒し、誰もいない道路のほうをじっと見ている。鋭い目と引き締まった表情が、野生のオオカミのようだった。
 ひいには何かが見えるのか? それとも何かを感じるのか?
 オトウには、白く焼けたコンクリートの道と、無人の荒野のように静まり返った家並しか見えない。
 しかし、ひいは一点を見据えたまま動かない。
 どれくらい経ったろうか、汗で眼鏡が滑り落ちはじめたとき、ひいは鼻先を地面に向けて辺りをうろうろしてから家の中へ戻った。いつも通り玄関の上がりかまちに前脚を乗せ、私が肉球を拭くのを舞っている。「あんよ」とコマンドをささやくと、右前脚、左前脚、右後ろ脚、左後ろ脚と自分から順に脚を上げた。
 小走りに居間へ行ったひいは水を飲んでいる。
「オトウ、なんでずっとこっち見てるの?」
 といったふうに小首をかしげて振り返ったとき、もうそこに野生のオオカミはいなかった。黒い丸ボタンのような目は、家で人と暮らす犬のものだ。
 どちらも、ひいだ。
 どちらのひいが好きかと問われたら、両方兼ね備えているから信じられると答えよう。人間だって、同じだ。

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