子供の頃から、クリスマスは特別な日に違いないのだが、さほど重要な感じはしなかった。私にとってメリークリスマスの言葉が心にしみたのは、新潟に住んでいたとき夕暮れからとつぜん小雪が降り出し暖房の熱で窓ガラスが一瞬にして真っ白になった日と、月並みだが映画「戦場のメリークリスマス」でビートたけしが演じた坊主頭のハラが〈 Lawrence 〉と大声で呼びかけ、〈 Merry Christmas, Mr.Lawrence 〉と日本語そのままの発音で言ったシーンの二つだ。
ハラは明日、処刑される。しかし、ハラのみならずこの世のすべてが赦された瞬間だ。一九八三年の公開当時、私にはよく意味のわからなかったハラの「メリークリスマス」だが、いまは胸をえぐると共に遠いところに気配として漂う安堵の存在が確信される。
いろいろなことが私にも妻にもあった今年のクリスマスイブだったが、それは日常の枠の中の出来事で特別なものではなかった。それは、ひいにとっても同じだったろう。犬用のクリスマスケーキもプレゼントも私たちは用意しなかった。しかし、私たちの群れが一緒に何ごともなく一日を過ごせたことを「特別ではない」と言える幸せを噛み締めなければならない。
メリークリスマス、ひい。メリークリスマス、疲れ果てた世界。メリークリスマス、人間たち。
久しぶりの記事更新ありがとうございます。
返信削除私もあのビートたけしの「めりーくりすます」には心をハッとつかれました。
今年は特に、何事もなく犬達といっしょに過ごせる幸せをかみしめています。
どうぞよいお年を。
コメントありがとうございます。石垣島は温かいのでしょうか。こちらは例年になく寒く、難儀しています。
返信削除ビートたけしは試写を見てあまりの演技の下手さにうなだれてしまったそうですが、あのシーンは彼の素の人間性がそのまま出てリアリティがあるのではないでしょうか。
何かと内外騒がしい年末ですが、mi-goro様もよいお年をお迎えください。