ここ数週間、ひいは落ち着かなかった。何かといえばオトウの車のにおいをかぎ、ドアを開ければ急いで乗り込もうとする。これは、Aさんが保護し里親のもとで幸せに暮らしている犬たちの同窓会の日取りが決まったあたりからのことで、オトウとオカアがせわしく準備をしていたわけでもないのに、ひいは何かを察知したのだ。ひいが人間の言葉をかなり理解できるのではないか、と信じる根拠のひとつである。
明日は同窓会という金曜の夜、ひいの車への関心は最高潮に達し、部屋にいてもそわそわしていた。私をじっと見つめ、しきりに飛びついてくる。「さあ、行こうよ。すぐ、行こうよ」といった具合でうるさいので、てるてる坊主をつくってやり「明日だよ。明日、晴れるといいね」と諭した。窓辺に吊るされたてるてる坊主を、ひいはじっと見つめ動かなくなった。
土曜日の朝、いざ出発。東名高速道路から首都高を抜け京葉道路で千葉へ向かう。幕張パーキングエリアでトイレ休憩。ひいはこれから始まるものへ距離を縮めたことを実感しているのか、駐車した車の中から千葉県に降り注ぐ太陽の光を見つめる。ここまでくると、私もあと一息と実感する。渋滞しているようだが、大きく遅刻する可能性はないとカーナビが教えてくれている。さあ、どんどん進もう。
すいらんグリーンパークに到着すると肌寒い曇り空だったが、ひいはぴょんと車から飛び降りた。そしてなんと駐車場でAさん一家の車を発見し、しがみつくようにしてにおいをかいだ。いとおしみ、なつかしみ、大好きなAさんご夫妻がここにいると確信したらしい。
貸し切りにした広いドッグランで、ひいは昔の仲間とご挨拶。新しい顔ぶれにも恐る恐るご挨拶。私と妻は飼い主のみなさんと世間話を楽しみ、ひいはがむしゃらに走り回り、Aさんご夫妻に「ひいです! ひいです! 会いたかったです!」と飛びつく。
毎度のことながら、里親家の群れにひとつの個性があり、一匹として同じ犬がいないのが楽しい。別々の群れで安定した日々を送ってる犬たちが、これをよくわかった上で仲間である人と犬と遊びに興じている。やはり、同窓会はひいたちにとって特別な日なのだ。
持ち寄った料理で昼食を食べていると雨が降り出した。ぽつんと頬に落ちる雨粒が、やがて豪雨に。予定より三十分ほど早く同窓会を切り上げることになった。それぞれの犬が、それぞれの群れの車に乗り込んで行く。
「今日は、どうもありがとうござました」
「これからも、よろしく」
「さようなら」
「さようなら」
人間は手を振り別れを惜しみ、群れのメンバーが揃った車で駐車場をあとにする。
いちばん最後にすいらんグリーンパークを出発した我が家の車が道へ出ると、車列のどこにも里親家の車を見つけられなかった。それぞれが、それぞれの家へ向かっている。群れの巣へ向かっている。ひいも同窓会が終わったことを理解しているらしく、なんだか幸せそうな眼をして後部座席でうつらうつらしている。ここからまた日常に戻る、とわかっているかのように。
ひいに兄弟姉妹がいることと、同窓生がいることと、それぞれの群れに犬を愛する優しい人がいることは、大切で得難い幸せだ。これはひいにとって幸いなだけでなく、私たち夫婦にとっての喜びでもある。
100キロほどの道のりを帰宅したひいは、渋滞につかまって体がカチカチになったオトウとベッドで仮眠した。股の間に挟まって、規則正しくおだやかな寝息を立てているひいは、どんな夢を見ているのだろう。今日のできごとは、一生忘れられないものになるはずだ。
明日は同窓会という金曜の夜、ひいの車への関心は最高潮に達し、部屋にいてもそわそわしていた。私をじっと見つめ、しきりに飛びついてくる。「さあ、行こうよ。すぐ、行こうよ」といった具合でうるさいので、てるてる坊主をつくってやり「明日だよ。明日、晴れるといいね」と諭した。窓辺に吊るされたてるてる坊主を、ひいはじっと見つめ動かなくなった。
土曜日の朝、いざ出発。東名高速道路から首都高を抜け京葉道路で千葉へ向かう。幕張パーキングエリアでトイレ休憩。ひいはこれから始まるものへ距離を縮めたことを実感しているのか、駐車した車の中から千葉県に降り注ぐ太陽の光を見つめる。ここまでくると、私もあと一息と実感する。渋滞しているようだが、大きく遅刻する可能性はないとカーナビが教えてくれている。さあ、どんどん進もう。
すいらんグリーンパークに到着すると肌寒い曇り空だったが、ひいはぴょんと車から飛び降りた。そしてなんと駐車場でAさん一家の車を発見し、しがみつくようにしてにおいをかいだ。いとおしみ、なつかしみ、大好きなAさんご夫妻がここにいると確信したらしい。
貸し切りにした広いドッグランで、ひいは昔の仲間とご挨拶。新しい顔ぶれにも恐る恐るご挨拶。私と妻は飼い主のみなさんと世間話を楽しみ、ひいはがむしゃらに走り回り、Aさんご夫妻に「ひいです! ひいです! 会いたかったです!」と飛びつく。
毎度のことながら、里親家の群れにひとつの個性があり、一匹として同じ犬がいないのが楽しい。別々の群れで安定した日々を送ってる犬たちが、これをよくわかった上で仲間である人と犬と遊びに興じている。やはり、同窓会はひいたちにとって特別な日なのだ。
持ち寄った料理で昼食を食べていると雨が降り出した。ぽつんと頬に落ちる雨粒が、やがて豪雨に。予定より三十分ほど早く同窓会を切り上げることになった。それぞれの犬が、それぞれの群れの車に乗り込んで行く。
「今日は、どうもありがとうござました」
「これからも、よろしく」
「さようなら」
「さようなら」
人間は手を振り別れを惜しみ、群れのメンバーが揃った車で駐車場をあとにする。
いちばん最後にすいらんグリーンパークを出発した我が家の車が道へ出ると、車列のどこにも里親家の車を見つけられなかった。それぞれが、それぞれの家へ向かっている。群れの巣へ向かっている。ひいも同窓会が終わったことを理解しているらしく、なんだか幸せそうな眼をして後部座席でうつらうつらしている。ここからまた日常に戻る、とわかっているかのように。
ひいに兄弟姉妹がいることと、同窓生がいることと、それぞれの群れに犬を愛する優しい人がいることは、大切で得難い幸せだ。これはひいにとって幸いなだけでなく、私たち夫婦にとっての喜びでもある。
100キロほどの道のりを帰宅したひいは、渋滞につかまって体がカチカチになったオトウとベッドで仮眠した。股の間に挟まって、規則正しくおだやかな寝息を立てているひいは、どんな夢を見ているのだろう。今日のできごとは、一生忘れられないものになるはずだ。
○バニーちゃん(写真上)とチビちゃん(写真下)は里親さんを募集中〈2012年12月現在〉です。詳しくは、Aさんのブログhttp://aokozu.exblog.jp/をご覧下さい。
昨日はお疲れ様でした。
返信削除煮豚、とってもおいしかったです^^
ひいちゃんのお口はその後大丈夫ですか?
うちのヤクザな犬が、本当にごめんなさい。
ひいちゃんもきっとビックリしちゃいましたよね。
それにしても、毎年、お散歩が嫌いなんて
信じられないほどの走りっぷりで^^
あのスレンダーな体は、ああやって作られているんだと
実感しました。
また来年、お会いできるのを楽しみにしています^^
おつかれさまでした。段取りをお任せして、申し訳ありませんでした。
削除マンネリな煮豚を食べていただけて、ほっとしております。
おいしくて楽しいランチタイムでしたね。
ひいの口、ぜんぜん問題ありません。ひいはケロッとしていますし、餌もガツガツ食べてます。
ひいにとっては、ふうちゃんの嫌いポイントと、犬界のルールを理解するよい機会になったはずです。
なんと言いますか、顔だけは大人っぽくなりましたが、ひいの中身は赤ちゃんで、一人っ子のお嬢さん気質なので……。
散歩といえば、本日の朝も道ばたで立ち止まっていました。
すいらんでのはっちゃけぶりは何なんでしょう。
ぜひまた、人と犬で集まりましょう。
冷えてきましたので、どうか皆様、ふうちゃん、かいちゃん、お体にお気をつけて。
先日は、寒いなかお疲れ様でした。
返信削除私も、昨日の更新時に、
「ひいちゃんの中身はまだまだ赤ちゃん」
と書いたところです(笑)
泥棒ひげが凛々しい顔にさせてはいるものの、
あの声といい、甘ったれな感じといい、
まさに赤ちゃんですよね。
またお会いできるのを楽しみにしています。
やっぱり、買った物より、作って持ち寄った物の方が断然美味しいと
思ったA夫婦でした~。
どうもありがとうございました。とても愉快な一日になりました。
削除日頃からひいは赤ちゃんだなあと思っていたのですが、同窓会でふうちゃんの姉妹とは思えないお姉さんらしさを目にして、あれが普通の五歳なのかと驚きました。
さらに、駐車場でAさんのお宅の車を自ら発見し、必死の形相でにおいをかいでいて、おっぱいをくれたお母さんとお父さんのことを忘れられないところなども、まだ子供なのかもしれません。
これって生まれつきのものなのか、我が家の家風(笑)がそうさせたのか、いずれにしてもひいの個性なんですね。
ひいはAさんご夫妻がほんとうにほんとうに大好きなので、私どもも一同が会せる場を楽しみにしております。(実は、私たちとひいがドッグランに到着すると、なぜか目の前に旦那様が現れるというシチュエーションが続いています。ひいの思いが通じるのでしょうか)
追伸.
バニーちゃん、チビちゃん、へ。
ふたりとも、ふわふわもふもふで、いい仔だったね。
幸せになってね。