誰かが千葉県富里の動物愛護センターに持ち込んだ乳飲み仔四頭のうちの一匹がひいだから、本当の誕生日はわからない。ただし、逆算すると十月のはじめ辺りに生まれたようで、こうなると天秤座生まれであるのは間違いなさそうだし、私の誕生日と同じ十月二日を誕生日とすることにした。 今年の誕生祝いは、温泉卵を餌に入れてあげること、そして首輪を新調することと決めていた。しかし、目をつけていたてんとう虫の刺繍のチロリアンテープを使った首輪は売り切れで注文製作になり、昨日、やっと手にすることができた。 家に戻ってペットショップの袋から、ついでに買ったおやつと新しい首輪を取り出すと、いつもならおやつに興味津々なひいが食べ物には見向きもせず、(気になります!)とまっすぐ首輪に向かって行った。 さらにてんとう虫の刺繍の首輪をつけると、モデルよろしく私と妻に見せびらかすように歩いた。私がこの場を離れると、自室まで追いかけてきて飛びつき、(もっと見て! 新しいの見て!)と居間に呼び戻らされた。私たちのうれしさが自分の首輪にこもっているのがわかるのか、それとも自分だけのものをもらった喜びなのか、とにかくひいはてんとう虫の刺繍の首輪の意味を理解しているらしい。 仔犬はたしかにかわいい。でも、人と暮らし続け気持ちを互いに解りあえるようになったそれなりの歳の犬は、さらにかわいいものだ。
この読み物は「ひい」こと「ひかり」の我が家での生活について書いたものです。ひいは乳飲み子のとき千葉の動物愛護センターから救われた犬で、2008年の4月(生後6カ月時)に当家の住人になりました。