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ひい熱中症になる


 朝から暑いので、散歩は短縮コース通称「緑道」にした。「リョクドウ」という言葉をひいは知っていて、コマンドのひとつにもなっている。たしかに「リョクドウ」を選ぶと散歩の距離は短く、目的地の緑道は大きな木陰が長く続き、どんなに暑い日も涼しい風が流れているのだが、そこまでの道のりと帰り道は陽を遮るものがない。
 散歩から戻ったひいは、突然、腰が抜け前脚にも力がこもらなくなりふらふらしはじめた。四本の脚は壊れた椅子のようにそれぞれ妙なかたちになり、ソファーの背もたれのクッションで体を支えるのがやっと。しかも呼吸は荒く、よだれが止まらない。目も充血している。
 とっさに何が起こったか訳がわからず、不安で頭の中が真っ白になった。
 体に触れると、あきらかに体温が高い。熱中症だ。
 部屋にエアコンを効かせ、冷凍庫から出した保冷剤で動脈が集まる首筋と太ももの内側を重点的に冷やす。
 かなり危険な状態に見えたので、妻はインターネットで犬の熱中症対策を検索して調べた。水を掛けて体を冷やすのが体温を正常に戻す手っ取り早い方法らしいが、風呂嫌いのひいが体の自由が利かないまま興奮しかねないので、保冷剤で冷やし続けることにした。
 ソファーに腰掛けた妻の太ももの上に身を任せだらりとしたひい。舌を出し、荒い呼吸が止まらず、傍らにいる私の脚に大粒のよだれが滴る。あごを妻のひざに乗せまぶたを閉じているのが、苦しさのためか心地よさのためかはっきりしない。
 この状態が三、四十分続いた。
 犬の熱中症対策法によれば、スポーツドリンクを水で二倍に薄めたものを与えるのがよいらしい。私は保冷剤でひいの体を冷やす手を休め、スポーツドリンクが入っている冷蔵庫を開けた。このときまでぐったりしていたひいが、顔を上げ上半身を起こしこっちを見た。
 これはいつもの、「あの大きな箱から何か出てくる」と期待する動作だ。
 ああよかった。ここまで回復したのだ。
 そして、ひいはソファーに寝たまま水で割ったスポーツドリンクをぺちゃぺちゃなめた。
 ひいは今、エアコンを点けた寝室のベッドの上で寝ている。
 コーヒーカップ一杯ぶんの水割りのスポーツドリンクを飲み干し、ヨーグルトを食べ、さっそく飲んだぶんだけ小便をし、階段を駆け下りられるまでになった。
 ひとまず安心だが、本日は安静にさせなければならないだろう。

コメント

  1. おはようございます。

    タイトル見てドキッとしてしまいました。
    ひいちゃん回復して良かったぁ(ホッ!)

    お二人の連携で適切な処置が功を奏して
    本当に良かったです。

    犬の熱中症も気をつけないとなりませんね。
    初めての生情報です、参考にさせていただきます。

    我家は小型犬ですので、散歩は大好きですが
    早朝の時間が取れないので最近サボり気味です。

    時折家の中で大運動会が始まりますので、
    それで運動不足解消になっているかなぁと
    思っています。

    今週末、五箇山の方へ3泊程旅行に行きます。
    今回の熱中症対策の方法を参考にさせていただき、
    準備品の中にポカリスエットは入っていませんで
    したので、早速準備しようと思います。

    返信削除
    返信
    1. お騒がせしてしまいました。本日の散歩は「リョクドウ」でしたが、ひいは大丈夫でした。犬は路面から近いところに体があるので、気をつけないとならないですね。
      しばらく様子を見ながら、体調管理に気をつけます。

      熱中症対策ですが、今回の経験から保冷剤を薄手のタオルでくるんで冷やすのがかなりよいようだと知りました。
      また、スポーツドリンクを人間用に常備していたので助かりました。二倍に薄めるくらいは簡単ですし。

      旅行、ですか! よい思い出をいっぱいつくれるといいですね。

      削除

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