Little Feat というアメリカのバンドがあり、私はアルバムを揃えるほど好きなのだが、昨日までなぜ Little Feat のファンになったか忘れていた。どうして昨日、思い出したかといえば、矢野顕子のファーストアルバム「JAPANESE GIRL」を iTunes Store で買いなおしたからだ。一曲目から再生。絶妙としか表現しようがない伴奏だけでも堪能できる音とノリは Little Feat にしかなし得ないものだった。LPレコードで発売された当時「JAPANESE GIRL」のA面はアメリカンサイドとされバッキングは Little Feat が担当していて、ジャケットかライナーノーツに印刷されていたスタッフの名前から Little Feat を知ったのだ。なるほど、そうだったか。
ちなみに Little Feat の面々は小遣い稼ぎのつもりで日本からきた若い女の子の伴奏をするつもりだったらしい。ところがセッションがはじまるや矢野顕子の才能に打ちのめされ、自分たちのオリジナルアルバムを録音するほどの気力を振り絞り、すさまじい演奏で立ち向かった。だから、私は伴奏者が何者か気になったわけだ。ところがリーダーで名ギタリストの故ローウェル・ジョージは「申し訳ない、僕らは彼女の才能をフォローしきれなかった。ギャラはいらない」とプロデューサーに泣いて謝ったのだった。
話の本筋より長くなりそうなので Little Feat についてはここまでにする。
「JAPANESE GIRL」のA面二曲目は「クマ」というタイトルで、矢野顕子が飼っていた犬の名が題名となっていて、死んだこの犬のことを〈かわいい、おまえにゃ嘘はつけないわ。私の心はお見通し。〉と歌っている。
ひいもそうだよな、と思う。
過日、私が眠っている間中ずっとひいが体を押し付けてきていた。適度なら嬉しいことだけど、密着しようとするあまりぐいぐい体重を掛けてくるので私はベッドから落ちそうになる。だからといって、ひいを力任せに跳ね返せば彼女の心は傷つくのではないかと感じ熟睡できなかった。度を超したとき、私はベッドで眠るのをあきらめ居間に移ってソファーに横たわった。すると、ひいがやってきた。
「ここで寝るですか。ベッドで寝ないですか」
と問いかけてくる目をした。
おまえが邪魔で眠れないとは言えない。
「なんとなく気分でな。オトウがいなくて広々したところで朝まで眠っておいで」
私の言葉の意味がわかったときひいは、いつもブルッと身震いして応える。しかしひいはくるりと踵を返し、一度振り返ると哀しげな表情をしてとぼとぼ寝室へ引き返した。〈かわいい、おまえにゃ嘘はつけないわ。私の心はお見通し。〉である。同じくらいひいの思いを私は感じ取れているだろうか。
一緒に暮らした動物は犬だけなので他の生き物は知らないが、人の心を見通せる力があればこそ、犬は何万年も人類と共に生きてこれたのだろう。そして人は、こんな犬たちに助けられてきた。
解りあえる言葉を互いに喋れたら、どうなっていただろう。
もしかしたら、うんざりする結末しかなかったかもしれない。
察する。察して、口にしない。口や喉のつくりの違いというよりも、これが互いのルールなのかもしれず、この意味を犬たちはよく理解しているのかもしれない。
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